表敬(ひょうけい)訪問という形で使われる「表敬」は1983年に出た第3版から広辞苑に登場した言葉という。つまり新語で、実はその誕生年まで分かっている。61年に作られ、その後に世間一般で広く使われるようになって辞書に載ったのである

▲その年来日したアルゼンチン大統領は明治神宮参拝を希望した。だがカトリックの多い国民感情を懸念する駐日大使の相談を受けた外務省と神宮側が協議、神宮の儀式課長が「参拝」ならぬ「表敬」なる新語を提案したのだ。拝礼も神道(しんとう)の作法とは違う方式を用いた

▲以後、外国賓客(ひんきゃく)の神社訪問には「表敬」が用いられたというのは、同神宮のホームページが記しているところである。来日した米大統領も過去に3人が明治神宮を訪ねている。「表敬」が一般に広まったのは儀礼的なあいさつや訪問を表すのに実に便利だからだろう