現在の艦船攻撃用兵器は、昔の重装甲でシステムが単純な軍艦を撃沈するためではなく、現在の軽装甲でシステムが複雑な軍艦を機能不全に陥らせることを前提としている。しかも、兵器価格は上昇し、かつての大砲のように気軽に何百発も撃てるようなものでもなくなった。一方で、タンカーを中心とする商船は防御力強化に努めてきた。これを傍証するのが1974年、東京湾で衝突炎上して漂流した「第十雄洋丸(43723総トン)」を海自がなかなか撃沈出来なかった事件である。海自は第十雄洋丸を処分するために、72発の5インチ砲を撃ちこみ、対潜哨戒機から9発の150キロ爆弾と9発の127ミリ空対地ロケットを命中させ、その後、潜水艦から二発の魚雷を命中させたが、右に7、8度傾いただけだった。このように、現在の兵装で艦船を撃沈するのはきわめて難しい。撃沈を前提としなくても、戦争を決意した国家が対艦用ミサイル・魚雷を商船攻撃に、どれだけ本格的に振り向けられるか難しく、嫌がらせ程度が限界だろう。このように、「現在の船舶の頑健性と対艦兵器の限界」を考えれば、シーレーンを途絶させることは難しいと言える。