メディア研究者佐藤卓己さんの労作に『言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』 (中公新書)という本があります。「小ヒムラー」と呼ばれ、戦時中の言論統制の元凶とされた鈴木の日記をひもとく中で、出版社やマスコミや言論人は、「軍部に書く自由を奪われた」のではなく、戦争で拡大するメディアビジネスのために統制されている紙を求め軍部に協力し、取り入ろうとしていたことが明らかになっていきます。
現場の記者や労組が、直接的な権力による報道の自由への圧力ではなく、ビジネスだから大丈夫と思っているなら歴史に学んでなさすぎるでしょう。権力にお願いするものが、権力を批判し、監視することはできない。むしろ積極的に一体化していく。それが、メディアがビジネスのために権力にお願いした結果、戦争を止めるどころか煽ったという歴史的な事実から学べることです。
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