なぜ韓国竹島に軍隊を置かないのか?

 例えば韓国と日本のあいだにある竹島問題です。これを韓国の立場からみてみましょう。韓国は竹島を不法占拠しています。日本が何を言ってこようが、竹島は韓国の威信にかけても絶対に譲れません。しかし、だからといって日本と紛争になるのもうまくありません。日本を決定的に追い込んで、自衛隊に防衛出動命令を出されるとマズいのです。

 そこで「軍隊は止めておいて、警備隊」という選択です。韓国は竹島の占領をより確かなものにするため、竹島に「独島警備隊」を配置して守りを固めています。この警備隊は韓国軍ではなく、韓国警察の所属です。といっても警備隊員たちはしっかり軍事訓練を受けています。軍隊で訓練を受けた後、軍から警察に出向した、という形です。だから実態としては軍事要員でも、建前は警察所属の警備隊です。

 なぜこんな面倒なことをするのでしょう。係争地域である竹島に軍隊を駐留させると、日本政府に「防衛出動」を発令する根拠を与えかねません。自国領
と主張している島に軍隊を置かれたのでは、いくら日本政府でも「これは侵略だ」と認定せざるを得ず、自衛隊を出して反撃してくるかもしれない、という恐れ
があります。だからあえて軍ではなく警備隊を置き、「韓国としては、島は譲れないが、かといって戦争にまで事を荒立てるつもりは無い」というメッセージを
日本側に送っていると捉えられます。

 竹島の例は警察所属の警備隊をつかって不法占領を強固にするケースなのであまり良い例ではありませんが、ともあれこのように「戦争勃発を防ぐため、軍ではなく警備隊を使う」というのは一般的な外交の知恵なのです。より一般的には、国境線付近はあまり軍隊を常駐させず、警察組織の警備隊のみにすることで、無用の緊張を避けるワンクッションとして用いられます。