「じゃぁ、本当のところはどうなっている?」という疑問が出てくるだろう。ここでは「死亡」にかかわる件数を見るのがよい。なぜなら、死亡はそう簡単に目をつぶって済ませることのできない事態、つまり私たちの意識の敏感さにかかわらず、ある程度客観的に実態が把握されるものだからである。死亡は、警察や病院関係者による精査を経て、それが虐待によるものであるかどうかが決定される。
下の図を見てほしい。棒グラフは、相談件数である。折れ線グラフは、実線が虐待による死亡児童数、点線が無理心中による死亡児童数である。実線も点線も総じて下方に向いている。つまり、子どもが養育者によって殺害されるケースは減少しているのである。
相談件数は急増し、死亡件数は減少している。これはけっして不思議な事態ではない。なぜなら、子どもを大切にする社会では、子どもの死亡は減り、それと同時に子どもが受ける小さな危険が次々と表面化するからである。安全な社会ほど、(小さな)危険が目立つ。「安全と危険のパラドクス」とでも言うべき作用がここに生じているのである。
本当に減っているとしても「減らしたい」という主張が認められるべき
虐待防止活動は、正義であるがゆえに、その主張が批判されることはあまりない。しかし、現実を直視しない、現実を捉え損なった主張が毎年のように繰り返されることは、けっして好ましいことではない。虐待防止に携わる人びとの絶え間ない努力によって、死亡数は減り、また児童相談所への相談も次々と寄せられるようになってきた。もちろん、個々のケースでは、信じがたい凄惨な事件がいまも起きている。しかし日本社会全体としては、虐待防止活動の成果が実を結びつつあると評価すべきである。
虐待問題を論じるときにいま必要なのは、虐待が実際に減っているとしてもそれでも「減らしたい」という主張が認められることである。私たちはなぜか、「悪くなっているから、改善しましょう」という論を立てたがる。しかし大事なのは、「悪くなっていないとしても、改善しましょう」と主張できることである。
「本当に虐待が増えているから、減らしましょう」とウソの根拠を立てる場合、「本当に減っている」というエビデンスが出されたとき、もはや「減らしましょう」と言えなくなってしまう。そして上記の虐待死や無理心中死の変動は、まさにそのエビデンスであった。もうそろそろウソをやめて、現実に見合った議論を展開すべきである。
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