岡田 今の円やドルだって、結局は同じことですね。円やドルには額面分の価値があると人々が信じているから、お金として使えているだけで。それにしても、日本は第二次世界大戦で負けたのに、円をよく維持できましたね。ドルになっていてもおかしくなかったでしょう。

山形 そうですね。ただ日本だけでなく、ドイツもイタリアも敗戦でかなりのインフレにはなりましたが、自国の通貨は捨てませんでした。最終的には、国民がその国の中央銀行を「きっと、何とかしてくれる」と信用するかどうかにかかっているんでしょう。

岡田 何だか、通貨こそが国のアイデンティティそのもののような気がしてきました。第二次世界大戦で負けたあと、天皇制をどうするかという議論にはなったのに、円をやめようという話にはなりませんでした。国王がどうであれ、自国通貨を持ち続けている限り、独立国だという気がしますもんね。

山形 そういう考え方もあります。大日本帝国憲法から日本国憲法に替わったことで、国体は変わったのかという議論がありますが、お金に関しては確かにそうかもしれません。