利き手によって前述のような差異が現れる謎について、今回の研究が解き明かすことはできなかった。しかしグッドマン教授は、とある仮説を立てている。

 実は今回の研究では、子どもと母親の両者が左利きだった場合、子どもの認知力に影響は見られないことが判明した。さらに不思議なのは、右利きの母親から生まれた左利きの子どもと同様に、左利きの母親から生まれた右利きの子どもにも、認知力の低い傾向が見られることだった。つまり、子どもの認知力に影響が現れたのは、母親と利き手が異なる場合だったのだ。

 これらを踏まえた上で、教授は「利き手がどちらであるかということ以上に、母親との利き手のマッチングが重要なのではないか」とし、さらに「母親と利き手がマッチしない場合、子どもは母親の行動を真似して学習することが難しくなる」ため、認知力の低下が起きるのではないかとした。

■右脳と左脳に違いはあるのか?

 現在までのところ、利き手は後天的な要因で決まるものではないことが判明しているが、なぜ左利きと右利きが存在するのか、また左利きが少数である理由など、多くは謎に包まれたままとなっている。胎児の段階で、何らかのストレスが子宮にかかった結果ではないかとの説もあるが、確実なことは研究の進展を待たねば分からないだろう。

 左利きの人間は、大昔から現在に至るまで様々な言われ方をしてきた。中世ヨーロッパでは「悪魔が取り憑いている」と考えられていたものが一転、現在では右利きよりも才能に恵まれているとの説が浸透している。しかし、左利きが才能に恵まれているというこの説は、米国の大統領に左利きが多いことから囁かれ始めたもので、「血液型によって性格が違う」という説と同様、医学的根拠のないものであるとの指摘もあるようだ。