天下無二、世界唯一の奇蹟

 わずか40数年にして日本を世界的強国に雄飛せしめた明治天皇の存在は真に偉大であった。明治45年7月30日、日露戦争における名状すべからざる心労のため崩御された時、国民の悲哀は筆舌に尽し難かった。明治天皇に最も親愛された乃木希典は、みあとを慕い夫人とともに殉死した。世界は明治天皇の崩御に深甚なる弔意を捧げ、その治世に絶賛を惜しまなかった。一外国紙はこうのべている。
「僅々25年の間に東亜の野蛮未開国より欧式の強国に進化し、すべての点において世界最大の文明強国と同等同様に遇せらるるに至りし事は真に天下無二、世界唯一の奇蹟なり。……しかるにこれらの人々(欧米人)はナポレオンよりもまたウィルヘルム1世よりも偉大な帝国創立者の1人を知らざるを常とす。実際、天皇はナポレオン、ウィルヘルム1世よりも偉大なるお方におわせしというべし。何となれば天皇の御事業は仔細に事理を剣覈(厳しく調べること)する人の眼より見れば、前記2帝の事業よりもなお驚くべきまたなお一層永続すべき性質を有せられたるごとく思惟せらるればなり」
  欧州人は明治天皇とその治世は、ナポレオンやウィルヘルム1世を凌駕するものと称えた。近代において自国を興隆させた帝王、国主すなわちヴィクトリア女王、ナポレオン、ウィルヘルム1世、ピョートル大帝、ワシントンと対比したとき、明治天皇はこれらの人物とは比べようのない高貴さを有した比類なき偉大な帝王であったことは疑い様がない。
  明治天皇は「億兆安撫の宸翰」にある通り国民の先頭に立ち凄絶としか言い様のない精進努力を重ね、「真に天下無二、世界唯一の奇蹟」を実現されたのであった。