2011年、アイルランド、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリア、日本、米国などの国債の格下げがトップニュースとして世界をかけめぐる。サブプライムローン問題で信用を落としたはずの格付け会社が、なぜこれほどの影響力を保持しているのだろうか。その理由は、格付けを代替する金融インフラが存在しないためである。…

… 金融・資本市場において、格付けは様々な場面で利用されている。格付けの存在なしに市場は機能しないと言っても過言ではない。投資家は格付けを参考に、債券の信用リスクとそれに見合う妥当な金利水準を判断する。… 格付けは機関投資家の投資ポートフォリオの一般的な統治ツールとしても使われている。… 金融機関の多くも、与信審査・リスク管理プロセスにおいて格付けを重要な情報として利用している。… 行政当局による格付け利用も普及している。米国において、格付けは50本以上の連邦法・規制および100本以上の州法・規制に引用されている。…

格付けは中立性・客観性のある信用リスク評価ツールとして、幅広く利用されている。しかしながら、格付け会社のパフォーマンスは常に安定しているわけではない。1970年のペン・セントラル、1997年のアジア通貨危機、2001年のエンロンおよびITバブル崩壊、2007年のサブプライムローン問題など、大型倒産や信用危機発生時に、格付け会社がそのシグナルをタイムリーに市場に発信できなかったことはしばしばある。

しかし、利用者は格付け会社の失敗を非難することがあっても、格付けの使用をやめることはほとんどない。逆に格付け会社のパフォーマンスが悪い時期に、格付けに対する需要が上昇する、一見矛盾した現象が過去に幾度となく繰り返されている。

なぜか。投資家も金融機関も行政当局も活動を続ける限り、信用リスク評価をサポートする機能が必要である。信頼に足りる信用リスク分析体制を自分で構築する手もあるが、多大なコストをかけなければならない上、格付け会社よりも良いパフォーマンスを挙げられる保証はない。確かに格付け会社は失敗するときもあるが、格付けを代替する現実的な選択肢がない以上、投資判断やリスク管理をサポートする情報として使い続けるしかない。

サブプライムローン問題で格付け会社はその信用を大きく失墜させたが、それでも市場参加者が自社の信用リスク評価機能を本格的に増強、拡張した話はほとんど聞こえてこない。行政当局も格付け会社依存からの脱却を模索したが、いまだその有力な代替選択肢が見つかっていない。

なぜ格付け会社は市場の暴君たるのか :マネー底流潮流:マネー :日本経済新聞

ときどきとんでもない失敗をしでかす格付け会社だが、それでも金融に関係するステークホルダーが信用リスク評価を下す会社として利用せざるを得ない理由。わかりやすい。

(via kashino)

(via tkdsngn)