“9/16(金)の夜10時から10時50分に放送されたNHKスペシャル「生活保護 3兆円の衝撃」という番組をみました。番組の最後に、湯浅誠さんと私
の2人が専門家として登場し、お互いほんのちょっとだけ発言していますが、私の発言部分について、すさまじい編集ぶりで、正直、魂消るというか、青ざめる
思いがしました。

私の発言の一部だけをカットし、こういう極論に仕立てあげてしまうのが、一般的な地上波なので、私は原則として民放収録
番組には出ない方針にしているのですが、これまで何度もクローズアップ現代などに出演していたNHKなので、収録だったのですが、つい油断してしまいまし
た(いつも信頼を置いているY記者が、異動で収録時に立ち会わなかったので、一瞬、不安に思ったのですが・・・)。一般的な地上波の原則に、信頼していた
NHKも例外ではなかったことが今回わかり、非常に残念に思います。

前半の番組内容(これも、関西で1年以上前から放送されている「かん
さい熱視線」という番組のダイジェストで、とくに目新しいものはありませんでした。これ自体は当時、優れた取材だったと思いますが。)からいえば、私と湯
浅さんの発言でバランスを取ったつもりでしょうが、この編集は、全く私の本意ではありません。

そもそも、エビデンスに基づかない恣意的な
生活保護基準の引き下げに反対するなど、湯浅氏の運動に協力していた時期もあるので、お互いそれほど大きな意見の隔たりはないはずですが、今回、湯浅氏が
発言した内容の多くが私と重なっていたため、あえてこの部分の私の発言はすべてカットされたようです。しかし、これでは、湯浅氏のすべての発言に私は反対
していると受け止められてしまいます。

また、「稼働能力層を生活保護に入れるのは間違いであるが・・・」という発言に続いて、本来は、
「入れない代わりにどうすべきか、あるいは入れてしまった稼働能力層にどう対処すべきか」、という処方箋の提言をそれこそ1時間半もかけて繰り返し話した
はずで、そこが私の発言の最大のポイントであったはずですが、番組では見事にカットされました(経済学を活用したインセンティブづけを提言したその内容に
関心がある方は、拙著「社会保障の不都合な真実」日経新聞に、その一部が紹介がありますが、それこそ一部ですし、落胆したので、ここでは発言内容を繰り返
して書く気力がしません)。

「稼働能力層を生活保護に入れるべきではない」、「指示義務で自立支援プログラムへの参加を強制すべき」とい
う発言だけにカットされては、世間の期待通り「血も涙も無い経済学者像」そのものですね。確かに、前ふりでそう発言したことは認めますが、発言の全部を取
り上げないで、前ふりだけでカットされるとは、正直、驚きました。

そもそも、生活保護の問題について、私と湯浅さんの対談で問題を多角的
に、深く掘り下げるということで、出演を引き受けたのですが、対談ではなく、それぞれの収録になったのは仕方がなかったとしても、発言のあの短さはあり得
ないように思います(全部合わせても1分程度?)。

これまでたびたび、クローズアップ現代などでNHKに協力してきましたが、今日を限り
にNHKに出演することは止めようと思いました。いずれにせよ、私にとっては大変残念な番組でした。ご迷惑をおかけしたであろう多くの方がたにこの場をか
りて、お詫びを申し上げたいと思います。”

NHKスペシャル「生活保護 3兆円の衝撃」の残念さ – 学習院大学教授・鈴木亘のブログ – BLOGOS(ブロゴス) (via atasinti)

(via tkdsngn)