テレビ局全体の電波利用料負担は、総計で42億4641万円にしかならないのに対し、営業収益は2兆9676億円もあります、電波の“仕入れコスト”は、営業収益のわずか0.14%ということになります。
 許認可事業という保護された無競争の周波数独占状態の中で暴利をむさぼるメディアの構図です。
 この歪んだ実態がまったく報道されないのは、日本のマスメディアの悪しきクロスオーナーシップのせいです。
 商業メディアがスポンサーに甘いのは万国共通の情けない問題ではありますが、特に日本のメディアがたちが悪いのは、日本のTVやラジオと新聞がグループ化してしまっている「クロスオーナーシップ」の悪弊のために、ある種の問題が、TV局もラジオ局も大新聞もみなが沈黙してしまうというマスメディア全体がチキン(臆病)になってしまっている点です。
 欧米の先進国の多くでは、言論の多様性やメディアの相互チェックを確保するために、新聞社と放送局が系列化する「クロスオーナーシップ」を制限・禁止する制度や法律が設けられていますが、日本でも、総務省令(放送局に係る表現の自由享有基準)にクロスオーナーシップを制限する規定があるにはあるのですが、これは一つの地域でテレビ・ラジオ・新聞のすべてを独占的に保有するという「実際にはありえないケース」(岩崎貞明・メディア総合研究所事務局長)を禁止しているにすぎません。
 その結果、読売新聞と日本テレビ、朝日新聞とテレビ朝日、産経新聞とフジテレビ、毎日新聞とTBSといった新聞とテレビ・ラジオの系列化が進み、新聞がテレビ局の悪質な電波利権の問題を一切取り上げない、テレビが新聞の再販問題を一切報じないことなどに見られるようにメディア相互のチェック機能がまったく働かず、新聞もテレビも互いをいたわりあう、互いの利権にかかわる報道をしないという弊害が生じているのです。