これについて参考になるのが、本ブログをご覧の皆さんにはすでにおなじみの、来月の末に新刊として出る予定の『自滅する中国』という本の中で展開されている、戦略家エドワード・ルトワック氏の分析です。

ということで今日はこのルトワック氏の韓国の戦略状況の分析の要点をご紹介。

ルトワック氏によれば、韓国の戦略状況は以下の要点にまとめられることになります。

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●国家は普通は独立を尊ぶものだが、従属したがる国もある。それが韓国だ。

●彼らは中国と中国人にたいして、文化面で深い敬意を持っている。
中国の「マーケットの将来性」にもその原因がある。

●韓国における中国と中国人への尊敬の念は明の時代にまでさかのぼることができる
その一番の担い手は、知的エリートとしての官僚である両班だ。

●面白いことに、中国文化の影響が非難されるのは北朝鮮
北では漢字は事実上禁止され、ハングルの使用だけが許されているほど。

●韓国では教育水準が高ければ高いほど反米の傾向が強まる。
 しかも最近はアメリカが衰退していると考えられているために、
 中国の重要性のほうが相対的に高まっている。
 個人で中国でビジネスを行っている人が多いという事情もある。

●極めて奇妙なことに、韓国は大規模な北朝鮮の攻撃を抑止するのは、
 グローバル規模の軍事力を持つアメリカの役目だと考えられており、
 実際に天安沈没事件や延坪島の砲撃事件にたいしても
 (死者が出たにもかかわらず)ほとんど報復は行っていない。

●つまり実際のところ、韓国政府は米国と中国に依存する
 従属者
となってしまっている。
 米国には全面戦争への抑止力、そして中国には
 一時的な攻撃にたいする抑止力を依存しているのだ。

●ところがこれは、アメリカにとって満足できる状況ではない。
 韓国を北朝鮮から庇護するコストとリスクを、
 アメリカは独力で背負わなければならないからだ。

●その上、韓国への影響力は中国と折半しなければならない。
 中国は北朝鮮への統制を中止すると脅かすことで、
 常に韓国政府を締め上げることができる
からだ。
 今のところ韓国が中国に声を上げることはない。

●米韓同盟を形成しているものが何であれ、
 そこには共通の「価値観」は含まれていない。
 なぜなら韓国はダライラマの入国を中国に気兼ねして
 堂々とビザ発給を拒否
しているからだ。

●現在のような政策を保ったままの韓国は、いわゆる「小中華」の属国として、
 しかも米韓同盟を続けたまま、中国による「天下」体制の一員
 となることを模索
しているのかもしれない。
 韓国が自国の安全保障のコストとリスクを受け入れず、
 かわりに従属者になろうとしているのは明らかだ。

●このような韓国の安全保障の責任を逃れようとする姿勢は、
 「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形であらわれている
 ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、
 日本へ無理矢理懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてすむのだ。

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いかがでしょう。

このルトワックの分析の要点をさらに簡潔にまとめれば、

1、米国に従属している韓国は、同時に中国にもすり寄っていこうとしている。

2、その大きな理由は二つ:歴史的・文化的な面での尊敬と、ビジネスのチャンスだ。

3、安全保障面では、北のコントロールを中国に、そして前面戦争の抑止は米国に依存。

4、その責任逃れの憂さ晴らしとして、日本にたいする情熱的な敵対心を展開。

となります。

アメリカ人がこのような分析をするというのは意外な感じがしますが、ルトワック自身はこの韓国の戦略を「大間違いを犯している」として非難しております。