昨日、加来耕三さんという歴史学者の講演を聞いた。会場は老人ばっかりだった。
「歴史に学び、未来を読む」というのがその講演の題。
ちょっと壮大な感じだが、内容はというと、
常識的に物事を考えることが大事だ、というすごく地に足のついた話だった。

歴史にロマンを求めるのは現実を無視することだとして、NHK大河ドラマを強烈にDisっていた
(龍馬伝は80%嘘で、篤姫は200%嘘だとか。残念ながら平清盛への言及はなかった)。

一番笑ったのは龍馬への言及。
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」は昔の講談本だかなんだかを下敷きにしていて、
あくまで創作なので「龍馬」ではなく「竜馬」表記にしているのだが、
多くの日本人はあれを本当だと誤解しているという。

話を要約すると、
龍馬は子供の頃勉強ができなくて大きくなっても寝小便をしていて、
唯一剣術に才があったという話になっているが、
頭が悪くて剣術に秀でている人間がどうして剣術指南とかにならずに、
日本初の株式会社を作ったり薩長同盟を仲介したりしているんだ。

人間はある日突然人が変わったように優秀になったり馬鹿になったりはしない、
常識で考えれば龍馬は勉強が得意なタイプの人間だったと考えるべきだ。
だいたい龍馬は暗殺されるとき、左手に拳銃、右手に刀を持っていたが、
拳銃を打ち尽くして弾切れになったあと刀を抜かずに拳銃を振り回したと伝えられている。
どうして剣術の達人が刀を抜かずに拳銃を振り回すんだ。

というわけで巷で伝えられている龍馬のイメージは司馬遼太郎に作られたものである。

大学で教えていると(加来先生は奈良大学の先生だそうです)毎年必ず龍馬かぶれが一人くらいいるが、
みんな悲しいくらいにワンパターンで、
「先生、おれは今はバカですが将来はビッグになるかもしれませんよ」などと言う。
今日の次に明日があるんであって、今日バカな人間は明日もバカなのだから、
こつこつ積み重ねなければしょうがないと説くが伝わらない。

…ということで俺は歴史に疎いのでふんふんそうなんだという感じで聞いていたのだが、
坂本龍馬に関する結論だけは以前からの俺の認識と一致していた。
「坂本龍馬が好きだと言う人間は信用ならない」