★大師堂経慰さん
大正6(1917)年、朝鮮生まれ。朝鮮総督府の江原道地方課長、朝鮮総督府事務官などを歴任。
婦女子の強制連行がなかったと思う根拠の第一は、もしも婦女子の強制連行があったとすれば、その目撃者は強制連行された者の何倍もいたはずだし、いかに戦時中であっても大きな抗議運動が展開されて当然であるはずだが、目撃証言も抗議運動も一切なかった事実である。根拠の第二は、戦時中の総督府の施政姿勢である。内鮮一体を唱え、戦争遂行に大きな協力を求めていた総督府の頭脳が、施政に当たって最も気を遣っていたのは民心の動向であり、処遇において朝鮮人と内地人を差別してはならぬ、というのは施政の基本であった。このような雰囲気のなかで、日本人と差別をして朝鮮人婦女子だけを強制連行することなど、全く考えられぬことである。
総督府首脳には苦い経験があった。29(昭和4)年の秋、発端は内地人中学生と朝鮮人中学生の小さなもめ事であった。光州(全羅南道)への汽車通学中に内地人中学生が朝鮮人女学生をからかったということから始まった。女学生の兄が、からかったという内地人中学生に「お前、何で俺の妹をからかったんだ」と詰問し、喧嘩になった。喧嘩はそこで終わらず、朝鮮人中学生と内地人中学生の小さな集団による喧嘩にまで発展した。警察は関係者を連行して取り調べたが、その際、内地人学生と朝鮮人学生の取り扱いに差別があった、ということで光州の朝鮮人中学生(当時は高等普通学校)が抗議行動を展開した。この抗議行動が光州で留まらず、間もなく全朝鮮の朝鮮人中学生の抗議行動に拡大した。この予想外の展開は総督府首脳を慌てさせたが、これは「理の通らぬ民族的な差別扱いには敏感に反応する民族性」を強く印象づけた事件であった。
このことがあってから10年、総動員体制から戦時体制に移行していた総督府施政において内鮮人の処遇の差別と見られるようなことのないよう常に気を遣っていた。内地人と朝鮮人との差別の象徴とされていたものが官吏の加俸制度であった。官吏の俸給表は内地人も朝鮮人も同じものが適用されていたが、内地人には判任官は6割、高等官には4割の加俸が支給され、これが内鮮人処遇上の大きな差別であった。小磯総督はこの差別をなくすよう強く主張され、結局高等官には昭和19年4月11日の総督府令168号で、判任官には1年遅れの昭和20年4月12日の総督府令75号で朝鮮人にも加俸を支給することになって、この差別は解消されたのであった。これは歴代総督の出来なかった差別の解消であり戦時中であったことを考慮にいれても特筆すべき決断であった。
・13/7/29付:慰安婦強制連行があったのなら、なぜ朝鮮人男性は反乱も起こさず黙っていたのか
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