やはり鍵になるのはメディアによる自殺報道の影響の根拠です。私はWHOの手引きを支持し、passerby_k氏はウェルテル効果を否定する何らかの根拠を支持しているわけです。そういう意味での同等と言えなくもありませんが、私がWHOの手引きを支持する理由は、WHOだからではなく、WHOが手引きを作った過程にあります。

WHOの手引きは二つの検証に基いて作成されています。

retroproctive sutdyによるメディアの自殺報道による影響調査
retroproctive studyに基くprospecitiveな社会実験による検証

つまりメディアの自殺報道と自殺の関連を結果からまず検証して、関連性を考え、それに基いてのメディアの自殺報道を規制したら自殺が減ったの事実です。これは妄想ではなく検証された事実です。社会実験の結果をあえて再引用しておけば、

 Etzersdorferと共同研究者により実施された研究では、ウィーンの地下鉄における自殺の報道に関して、報道ガイドラインを導入し、センセーショナルな自殺報道を減らすことで、結果的に地下鉄における自殺率を75%減少させた。そしてウィーンのすべての自殺を20%減少させたのである(25-27)。

 さらに重要なこととして、繰り返しこのガイドラインを国全体に周知することで、オーストリアの自殺率の推移に変化をもたらしたのである。この好ましい影響は、メディアがしっかりと協力をした地域に顕著で、長い期間、広範に維持された(28)。

問題はオーストリアの結果が日本で同様に起こるかどうかになります。つまり普遍性のあるものなのか、日本には当てはまらないかです。こればかりはやってみないと間違い無く効果があると「必ずしも断定」できません。

そうなると社会実験を行う是非と言うかデメリットがどの程度かになります。大きなデメリットを伴うものであれば実行には慎重さが求められますし、さほどのデメリットも生じないのなら自殺対策として試みてみる価値がある事になります。WHOの手引きにあるメディアの自殺報道への対策のクイックレファレンスとして提示されているのは、

努めて、社会に向けて自殺に関する啓発・教育を行う
自殺を、センセーショナルに扱わない。当然の行為のように扱わない。あるいは問題解決法の一つであるかのように扱わない
自殺の報道を目立つところに掲載したり、過剰に、そして繰り返し報道しない
自殺既遂や未遂に用いられた手段を詳しく伝えない
自殺既遂や未遂の生じた場所について、詳しい情報を伝えない
見出しのつけかたには慎重を期する
写真や映像を用いることにはかなりの慎重を期する
著名な人の自殺を伝えるときには特に注意をする
自殺で遺された人に対して、十分な配慮をする
どこに支援を求めることができるのかということについて、情報を提供する
メディア関係者自身も、自殺に関する話題から影響を受けることを知る

これらをメディアの自殺報道に求めたところで実害は極めて少ないと私は考えます。これを「妄想」と断じ、「必ずしも断定できない」との理由で実行を躊躇う理由が私には見つかりません。