8月3日、産経新聞はオンライン記事で「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に・・・誰と会っていた?」という、かなり扇情的な見出しの記事をアップした。
問題の記事は以下のような内容だった。
韓国内での噂レベルの話をまとめた記事
(1)朝鮮日報の「大統領をめぐる風聞」というコラムを見ると、セウォル号が沈没した当日、大統領が公務の時間に密かに会った人がいた。
(2)証券街の関係者によると、このウワサは朴大統領とある男性に関することであり、相手は当時既婚者であった。
(3)ウワサの渦中にある男性は、朴大統領の元秘書室長で、朴大統領が若かりし頃親密な関係にあったと言われている故チェ・テミン牧師の娘婿のチョン・ユンフェさんだ。
よく読んでみると、韓国内で巷のウワサになっている内容を取りまとめたもので、まだ誰にも確証がないにもかかわらず、あたかも真実のように書かれており、読者がウワサを超えた疑惑を募らせるような内容になっている。
さて、産経新聞が引用したとするのは、韓国最大手の日刊紙「朝鮮日報」7月18日付コラムである。
「大統領をめぐる風聞」というこのコラムには、4月16日セウォル号が沈没した日、朴大統領は午前10時頃に書面報告を受けてから、中央災難安全対策本部の現場訪問に行くまでの7時間、対面報告も大統領主宰の会議もなかったという。
そして、巷では様々なウワサが流れているが、そうした状況になったのはこれまでの大統領の人事がよくなかったせいであるとしている。
これまでも野党やセウォル号事件の関連団体は、朴大統領と青瓦台が「空白の7時間」に何をしたのかについて真相究明を求めていた。
実際、証券街の「チラシ」と言われるタブロイド版的なニュースは、大統領は事故当日、大統領の秘線ライン(朴大統領の側近でありながら、裏の権力者たち)として浮上しているチョン氏と密会していたという説を流している。
だが、青瓦台は微動だにしなかった。おそらく国内問題であるという思惑なのだろう。どんなに黒いウワサが立っても無視していれば、「人の噂も七十五日」、自然と消えていくと考えていたと思われる。
青瓦台の逆鱗に触れた産経新聞
しかし、産経新聞がこのウワサに関して報道すると、青瓦台の逆鱗に触れた。ファン・ウヨ教育部長官候補者の人事聴聞会(公聴会)で産経新聞の報道が問題提起されたためだ。
人事聴聞会で、ユン・ドゥヒョン青瓦台広報首席は記者たちに、「(産経が)口に出して言いたくないほど恥ずかしいことを記事にした。民事・刑事上の責任をきっちり取らせる」と言い放ったのだ。
青瓦台だけでなく、「独島(日本名・竹島)サラン会」と「自由守護青年団」など、一部の市民団体は記事を書いた産経新聞の加藤達也ソウル支局長を告訴した。
ある団体は、こんな根も葉もないことを扇情的に書き立てたメディアは永久にこの地から追放すべきだとまで言った。
これによって、検察は加藤支局長を2度召喚訊問し、朴大統領の側近中の側近と言われているチョン・ユンフェ(59)氏の調査も開始した。
チョン氏は、朴正熙(現大統領の父)元大統領政権末期に各種の不正疑惑により内査を受けたことのある故チェ・テミン牧師の元娘婿で、朴現大統領が国会議員の時に秘書室長をした人物である。
チョン氏は、検察の調査で「セウォル号の事故当時、青瓦台へ行った事実はない」と証拠資料を提出した。青瓦台の出入記録を確認した結果、チョン氏の話は事実と認められた。
こうした調査を基に韓国の検察は、大統領のセウォル号沈没当日の行方に関して報じた産経新聞のオンライン報道が朴大統領の名誉を棄損した容疑が強いとみて、情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律(情報通信網法)違反の容疑を適用させようと検討している。
大統領は、特殊な身分で「プライバシー」も公開対象になり得る。とりわけ国家的な災難があった時期は必須だと言える。また事故当日は平日なので勤務時間中でもあり、「プライバシー」を理由に明かせないのは国民も理解しがたい。と述べる新聞もある。
そもそもの発端は李明博大統領の独島訪問報道
朴槿恵大統領を取り巻く男性関連のウワサを報道した日本の産経新聞は、このようにして韓国の法的な審判を受けることになった。
記事を書いた加藤達也支局長は、2度も検察に召喚された際、「朝鮮日報と証券街のチラシニュースを引用した」と主張、朴大統領への名誉棄損の容疑を否認している。
朝鮮日報の記事の時はなぜ黙っていて、こうして日本のマスコミが報道すると、躍起になって名誉棄損で告訴するのか。それには深いわけがある。
李明博前大統領が2012年当時独島を訪問したことは日韓関係をかなりこじらせるきっかけとなった。実は李前大統領の独島訪問をいち早く伝えたのは日本のマスコミだったのである。
大統領の安否に関しては事前のエンバーゴ(報道解禁時刻)を守るべきなのに、日本のマスコミがそれを破ったということで、韓国内では、韓国の国家権力に向けての一種の挑発とまで受け止めていた。
今回は産経新聞である。特に、産経新聞は朴大統領の空白の7時間をスキャンダラスな雰囲気に書き立てることで、隣国の国家元首の道徳性に傷をつけかねないことをした。従って青瓦台では以前の二の舞いにならないために先手を打っていると言える。
しかし、韓国にも一方では日本政府の公式の見解や発表でもない外信の報道にここまで強硬手段に出る必要があるのかという認識もある。特に、産経新聞が引用した朝鮮日報のコラムは何のお咎めなしというのは理解できないと思う人たちがいる。
こうした強硬手段はかえって「空白の7時間」を目立たせることになり、本当に何があったのかその真相究明を求める人たちが増えてしまった。
それでも空白の7時間には頑なに境内(大統領府内)にいたとしか答えない大統領。これではますます勝手な妄想が広がり、それこそ聞くに堪えない興味本位のウワサ話が流れ始めてしまっている。
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